スパコンはコモディティ化"しない"

ここ数日、よく見かけるので元ネタを探してみた。
スパコンⅡ~歴史の法廷とは~(BeneDict 地球歴史館)
批判は生産的じゃないが言わせてもらう。

(1)第五世代コンピュータ・プロジェクトの比較表。どこが似ているの?まず目標とする所が違う。一方は機械による知能の実現可能性の研究であり、一方は最速のナンバークランチャーを実現することである。
予算も倍違うし、所管は当然それぞれ担当の役所があるだろう。開発も異なるし、成果はまだわからない。並べてみただけじゃないの?

(2)第五世代コンピュータ・プロジェクトについては、当時使用できたリソースと現在のリソースを比べるのは不公平だ。PSIは16Mワード(80MB)しかなかった。なお、私が学生時代にいじったPSIは三菱重工でエキスパートシステムとして稼動していたものの借用品だった。
究極のチェスゲーム(BeneDict 地球歴史館)
【三菱電機】 MELCOM PSI(コンピュータ博物館)

(3)「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか?」大いにある。大相撲だって場所ごとに優勝者がすべての賞品をもらっていくのだ。二位以下は記憶にも残らない。トップを目指して努力しなければ入賞すらできない。

(4)独自マイクロアーキテクチャによる開発は重要。(命令セットアーキテクチャじゃないよ、念のため)これが途切れると再び開発を続けるのは難しい。開発者が散ってしまうからだ。汎用機でいえば日立はIBMからOEM供給を受けているし、NECはItaniumでACOSをエミュレートしている。富士通はまだ独自にプロセッサを作る力がある。
 また、SPARC64Viiifxは浮動小数点演算に特化しているが汎用プロセッサである。「1台500億円のスパコンを1台」も「1台50億円のスパコンを10台」も可能だ。スカラ型の利点はここにある。

(5)「一番売れるモノが、最終的に、性能でも勝つ」というのは全面的に賛同できない。結果的にそうなっただけのこと。486~Socket7時代はx86アーキの独自実装が各社から出ていた。AMDをはじめCyrix,VIA,IDT(WinChip),RISE,NexGENなどが凌ぎを削っていた。これらの売りは本家Intelよりも安くて高性能な点だった。これをソケット形状を変えることによりマネされないようにしたのがIntelであり、なんとかついていけたのはAMDだけだった。このAMDの存在がなければIntelの独占で競争はなく、現在のようなオーバースペック気味のチップが果たして安価に手に入っただろうか?

(6)「『Xeon』をスパコンに最適化して販売したら?」これまんまItaniumのことじゃないの。NECは日本では初期からItaniumでサーバ機を作っており、その上でACOSを動かしている。また、Itanium/Xeon機は富士通も基幹IAサーバとして開発・販売している。多様性を持たせたリスク分散は企業の判断ではないの?なおItaniumは元々浮動小数点に強いプロセッサなのでこれを使ったスカラ型のスパコンはすでにLenovo等から出ている。

(7)「性能で劣るCPUが、優れたCPUを淘汰した」これは否定できない。性能がよければ生き残るのであれば、今ごろ8bitの組み込み向けアーキテクチャは6809になっているだろう。だが実際はより古い組み込み用途の8051の方がライフは長く、新しいアーキテクチャは次々に出ている。
 8051やx86は過去の資産が寿命を伸ばした例だ。新規の命令セットアーキテクチャを持ったチップが次々と出るのは、コンパイラ技術の進歩によりチップ発売と同時に開発ツールが提供され、新規開発が容易になり、過去に引きずられなくて済むようになったからだ。
 ハイエンドのプロセッサではLinuxに代表されるフリーのUNIX系OSの登場が大きく影響している。どんなプロセッサでも移植可能だからだ。実際、FreeBSDをあるプロセッサに一ヶ月で移植した例を私は知っている。これによりアプリケーションの量の差は縮まる。

私の考え:
「多様性の中で、競争の渦中にあるものが最高の性能をたたき出す。だが勝者は常に変わりうる」

 スカラ型がいいという人は、スカラ型=パソコンを集めた物と思っているような気がする(だからIBMのPOWER買ってこいという話は聞かないのか)。しかし相互結合するインターコネクトや大量の演算結果を保存するストレージ、これらの精密な装置を収容し冷却し電磁波から守る施設など、半導体以外のあらゆる技術が必要なのですよ。それ、アキハバラで売ってますか?
 5年も経てば当然プロセッサの性能も向上するだろう。SPARC64Viiifxも含めて。今回は無理でも次回で天下取ってSPARC64Viiifxの後継チップを価格性能比でトップにし、世界中に売りまくってさすがは日本よ、と言われてみたくはないんですかね。

ベクトル機の現状は以下を参照のこと:
自然現象から新幹線まで:ベクトル型スパコンの存在意義――地球シミュレータのいま(ITmedia)
「地球シミュレータ開発史」PDF 版公開(/.J)


あと、スパコンについてなんか言いたいヤツは最低これ読んでこい↓

ペタフロップス・コンピューティング―地球シミュレータを原点に“和”のスパコンを求めてペタフロップス・コンピューティング―地球シミュレータを原点に“和”のスパコンを求めて
谷 啓二 福井 義成 上島 豊 奥田 洋司 矢川 元基

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