出荷試験

 計算機に限らず機械類の品質を保証するためには出荷試験が大切だが、あまりまとまった記事など見かけないので覚えているうちにまとめておく。きっとこんな地味な作業は興味持たないんだろうな。でも実際重要。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/故障率曲線はバスタブ曲線と呼ばれている。出荷する前に初期故障を弾くことができれば、安心して出荷できる。このためにエージングという作業を行う。半導体では、高温環境下でテストパターンを流すストレステストを数時間~数日行い、室温での運用時の時間に換算して数ヶ月分動作させる。このテストにパスしなかったものは初期故障品であり、廃棄する。この期間をパスしたものは今後も動作を続ける確率が高いため、出荷可能と判断する。エージングといえばオーディオだったり新車のバイクの慣らし運転だったりするが同じ様な考えです。
 ASICではテープアウト後の最初のロット(ES品、Engineering Sample)が未エージングだったりするが、これはテストパターンが間に合っていないことと、特に初めて使う半導体テクノロジの場合はうかつにストレスをかけると全滅させる可能性があるためだ。ES品で動作を続けていると部分的に故障することがあるが、これは初期故障が長時間のデバッグ中に発生してしまったためだ。
 すべて組み込んだ計算機システムの出荷テストでも、同様にストレステストを行う。昔はチャンバー(恒温室)に入れてランニングテストを行っていたが、最近は簡易テントで覆ってテストプログラムを連続して走らせる。自熱で勝手に高温になってくれるのでちょうど良い。他にも電源電圧(I/O,プロセッサコアなど)を±5%または±10%に設定してランニングテストを行う。CMOSでは電圧が低くなるとディレイが厳しくなる方向なので、このテストで落ちると電圧に対しマージンがないという判断になる。電圧-方向、温度+方向がLSIにとっては厳しいテストとなる。マージンを決めない標準値でのテストなど通って当たり前なのですよ。
 逆に低温試験というのもある。寒冷地に出荷したマシン、特に小型機は空調が完備していない所で使ったりするので早朝に起動するときの環境温度が氷点下というのもあり得る。この場合、ディレイの逆でレーシングという現象が発生する。レーシングとは動作が速すぎてFFが信号をホールドする前に論理が貫通してしまい誤動作する現象である。また、充分に温まらない環境では特に化学部品の電解コンデンサが性能を発揮できず電源が不安定になることがある。信頼性を上げるために温度の影響を受けにくい固体コンデンサに変わりつつあるのはそのためだ。詳しくは書かないが信頼性向上のための部品の選定も設計時から考慮する必要がある。

 個人で体験したのは、低温で起動しないPC用のマザーボード2枚、初日に壊れたACアダプタ。前者は低温での評価すらしておらず、後者はエージング未実施の初期故障だろう。製造を海外にまかせっぱなしの所は、一定の数量を作っておいて故障があれば交換し、在庫がなくなったら売り切れで次の製品に切り替えているようだ。しっかりした所は海外で生産しても出荷試験まで指導するはず。信頼性で知られたメーカーならば過剰品質と言われようともブランドを守るべきだろう。故障したら交換というのはどこだってできる。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック