半導体職人の朝は早い


 半導体職人の朝は早い。

 晴天の日に砂漠へ赴き、良質の砂を採取する。集めた砂をよく洗い、炉に入れて溶かす。頃合いを見て職人は糸につけた種を入れ、炉を回しながらゆっくり、ゆっくりと引き上げる。
「こうすると、よいインゴットができるんですよ」職人は大きなインゴットをスライスし、一枚一枚丁寧に磨いていく。たくさんの水を使うため、水質にもこだわっている。銘水を求めて、わざわざ地方にまで引っ越したそうだ。
「良い作品ができるといいですね」ウェハは半導体の大事な素材。職人のこだわりの理由がわかったような気がした。


 プロセス職人の朝は早い。

 職人は起きると白い防塵服に着替え、空気シャワーを浴びる。釜は埃に敏感だ。
「あまりにも綺麗な環境なんで、風邪を引きやすくなりましてね」秘伝のスパイスを釜に一振り。
「これは、誰にも教えられませんよ」笑いながら釜から焼きあがったウェハを取り出し、光にかざして確認する職人。
「やはり歩留まりは気になりますよ。たくさん採れると、嬉しいですね」そう話しながらウェハを小さなダイに切り分けていく。この後、ダイをパッケージに封入するそうだ。


 回路設計職人の朝は早い。

 文机に向かって、瞑想している。職人の頭の中はトランジスタのことばかりだ。
「論理設計の職人から(動作速度を)速くしてくれ、と言われるとコンチクショウ、と思いますが」何かを描きはじめた。
「こうして要求以上の回路ができると」絵に細かい数字を入れている。
「そんなことは、嬉しくて忘れてしまいますよ」出来上がったスケッチは清書され、プロセス職人と論理設計職人へと渡される。
「まだまだ、たくさんの回路を作らないといけません」そう言って職人は、また何かを考え始めたようだ。


 論理設計職人の朝は早い。

 胸ポケットに挿している蛍光ペンで図面の配線をなぞる。
「昔は色々と試しましたが、やはり紙と鉛筆ですね」若手の描いた図面を見て、印を付け、さらさらと自分で描いた図を糊で貼り付ける職人。昔から変わらないこの方法だ。
彼の机の上には姿が隠れる程に積み上げられた図面。これをすべてチェックするのだそうだ。誰よりも早く来て一番最後に部屋の電気を消す。
「作図は誰にでも出来ますけど、確認が大切なんですよ」二度三度と、納得がいくまで丁寧に見るそうだ。
この図面の山がなくなる頃には、良い石ができるでしょう。

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